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1. 劇症肝炎とは

肝臓は、身体に必要な物質を合成し、薬物や身体に有害となる物質を解毒、排泄するなど、生命活動にとって重要な役割を担っています。肝臓の中で、これらの働きを担う細胞(肝細胞)が急激にかつ大量に壊れることによって、その機能が低下する病気が劇症肝炎です。肝臓の機能が低下すると、血液を凝固させるために必要なタンパク(凝固因子)の産生が失われ、また、身体に有害な物質が蓄積して意識障害(肝性脳症)が出現します。もともと健康な人に全身のだるさ、吐き気、食欲不振など急性肝炎と同じ症状が現れてから8週間以内に肝性脳症が見られ、血液中の凝固因子が著しく低下した場合に劇症肝炎と診断します。肝細胞は増殖する能力に富んでいるために、急性肝炎の大部分は、肝細胞が壊されても自然に元の状態に戻ります(肝再生)。しかし、劇症肝炎ではこの破壊が広くおよぶために、肝細胞の増殖が障害されて、適切な治療を行わないと高頻度に死に至ります。

2. この病気の原因はわかっているのですか

劇症肝炎は、肝炎ウイルスの感染,薬物アレルギー,自己免疫性肝炎などが原因で起こります。わが国では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40%を占めています。これには、B型肝炎ウイルスのキャリアが発症する場合と、キャリアから性交渉などを介して感染して発症する場合とがあります。A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染もその頻度はわずかですが劇症肝炎になる場合があります。

B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、原因のわからないもので、全体の約30%を占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎による劇症肝炎は、いずれも10%以下です。しかし、原因のわからない劇症肝炎患者さんには、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎によるものが含まれている可能性があります。また、A型やB型肝炎ウイルスが原因の場合には、急性肝炎と原因が同じなのにもかかわらず、なぜ一部の人で劇症肝炎になるのかは、わかっていません。

3. この病気ではどのような症状がおきますか

最初の症状としては、発熱、筋肉痛などの感冒様の症状、全身のだるさや食欲不振などが多くみられます。次いで、尿が濃褐色になるとともに黄疸が見られるようになります。最初の症状が軽度で、黄疸がでて初めて病気に気づく場合もあります。

急性肝炎では黄疸がでてからは全身のだるさなどの症状が軽くなりますが、劇症肝炎に進む場合は、これらの症状が持続するかまたは逆に強くなり、やがて肝性脳症が現れます。
肝性脳症の程度は様々です。昼と夜の睡眠リズムの逆転、服装や姿勢が乱れていても無関心でいたり、さらには、場所、人、時間などを間違えたり、興奮して暴れたりするようにもなります。重症になりますと、眠ったままで呼びかけや痛み刺激に反応しない状態(肝性昏睡)に陥ります。
劇症肝炎では、細菌の感染や腎臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器の障害が高頻度に起こります。そのため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔内や注射針で刺した部位からの出血など、色々な症状が次々と現れることになります。
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